サジェストとは、検索窓にキーワードを打ち込んだときに下に出てくる「検索候補」のことです。Googleが利用者の検索行動などをもとに自動で表示しているもので、人が一つひとつ選んで並べているわけではありません。ここに自社名と並んで「ブラック」「詐欺」といった言葉が出てしまうと、まだ何も知らない相手の第一印象を左右してしまいます。
この記事では、サジェストの基本的な仕組みと、企業がそれを気にすべき理由、そして自社名のサジェストを自分で確認する手順までを、専門知識がなくても分かるように整理します。
サジェストとは?検索窓に出る「検索候補」のこと
検索エンジンの入力欄に文字を打ち始めると、その下にずらりと候補が並びます。「東京 ラーメン」まで打つと「東京 ラーメン 深夜」「東京 ラーメン 二郎系」などが出てくる、あれです。この機能を検索エンジン側はオートコンプリート(自動補完)と呼び、日本のWeb業界では一般にサジェストと呼んでいます。
サジェストは「予測」であって「評価」ではない
まず押さえておきたいのは、サジェストはあなたが次に打とうとしている言葉の予測だという点です。検索エンジンがその会社を「怪しい」と判断して表示しているわけではありません。「この文字列を打った人は、次にこう続けることが多い」という統計的な予測が出ているだけです。
ただし、それを見た人がそう受け取るとは限りません。検索する側からすれば、Googleがわざわざ出してきた候補なのだから何か根拠があるのだろう、と感じるのが自然です。仕組み上は中立でも、受け取られ方は中立ではない——ここがサジェスト問題のややこしいところです。
「サジェスト汚染」と呼ばれる状態
社名や店名を入力したときに、ネガティブな言葉が候補として並ぶ状態を、俗にサジェスト汚染と呼びます。たとえば架空の「〇〇工業株式会社」で検索したときに「〇〇工業 ブラック」「〇〇工業 やばい」といった候補が並ぶ、というイメージです。悪意ある書き込みが原因のこともあれば、単に一時期そう検索した人が多かっただけ、ということもあります。
サジェストが表示される仕組み
Googleは、オートコンプリートの候補を「実際に行われている検索」をもとに自動生成していると説明しています。人手で候補を書いているのではなく、複数のデータを組み合わせたアルゴリズムが決めています。
検索回数と、その伸び方
もっとも大きいのは、その組み合わせが実際にどれだけ検索されているかです。累計の回数だけでなく、短期間で急に検索が増えたかどうかも影響します。ニュースや口コミがきっかけで一気に検索されると、それまで無関係だった言葉が突然候補に上がってくることがあります。
場所・言語・タイミング
同じ言葉でも、検索している地域や言語設定によって候補は変わります。地域名を含まない検索でも、その土地でよく検索されている言葉が優先されることがあります。時期による変動もあり、季節性のある業種では時期によって候補の顔ぶれが入れ替わります。
検索エンジン側のフィルタ
検索エンジンは、暴力的な表現や露骨な性的表現、根拠のない危険な情報などについて、候補として出さないためのポリシーを設けています。よく検索されているからといって何でも表示されるわけではありません。裏を返せば、ポリシーに触れない範囲のネガティブワードは、よく検索されていれば表示され得るということでもあります。
サジェストと「関連キーワード」は別物
混同されやすいものが三つあります。整理しておきましょう。
- サジェスト(オートコンプリート):検索窓に入力している最中に、下に出てくる候補。まだ検索ボタンを押していない段階で見えるもの。
- 関連キーワード(他の人はこちらも検索):検索結果ページの下部などに出る、関連する検索語のリスト。検索した「後」に見えるもの。
- 他の人はこちらも質問(PAA):検索結果の途中に差し込まれる質問形式のボックス。
企業にとって影響が大きいのは、圧倒的にサジェストです。理由は単純で、検索する意思のない人にまで見えてしまうからです。社名を入力しただけで目に入るため、避けようがありません。
企業がサジェストを気にすべき3つの理由
1. 検索結果を見る前に印象が決まる
いくら公式サイトを整えて検索1位を取っていても、社名を打った瞬間に妙な候補が並んでいれば、その印象が先に届きます。ページを開いてもらう前の段階で勝負がついてしまう、という点でサジェストは他のどの施策よりも手前にあります。
2. 見ているのは「これから関わる人」
社名を検索するのは、既存の顧客よりも、これから取引を検討する会社、応募を考えている求職者、初めて来店しようとしている人です。つまり、まだ関係ができていない相手ほど、サジェストの影響を強く受けます。採用面では、応募直前に社名を検索して離脱するケースが起きても、こちらには何も見えません。
3. 気づくのが遅れやすい
ネガティブな候補が出ていることを、社内の人間はなかなか自分では発見できません。自分の会社を毎日検索する人はいないからです。取引先や社員からの指摘で初めて知る、というのが典型的なパターンで、そのときにはすでに数か月が経過していることも珍しくありません。
自社名のサジェストを自分で確認する手順
ツールを使わなくても、今すぐ自分で確認できます。5分あれば一通り見られますので、まずは手を動かしてみてください。
ステップ1:シークレットウィンドウを開く
普段のブラウザでそのまま検索すると、自分の検索履歴に引っ張られた候補が出てしまい、他人が見ている状態と食い違います。Chromeなら「シークレットウィンドウ」、Edgeなら「InPrivateウィンドウ」を開いてから検索してください。シークレットウィンドウとは、履歴やログイン情報を使わずに閲覧できるモードのことです。
ステップ2:3つのエンジンで同じ言葉を打つ
Google、Yahoo!、Bingの3つで、それぞれ社名を入力します。検索ボタンは押さず、候補が出た状態で止めてください。エンジンごとに候補の並びは違います。日本ではYahoo!の利用者も一定数いるため、Googleだけ見て安心するのは早計です。
ステップ3:社名の後ろに1文字ずつ足してみる
社名だけでは何も出なくても、後ろにスペースを入れて「あ」「か」「さ」……とひらがなを1文字ずつ足していくと、隠れていた候補が現れることがあります。あわせて「社名+評判」「社名+口コミ」「社名+求人」など、相手が打ちそうな言葉も試してください。
ステップ4:スクリーンショットを日付つきで残す
見つけたものは必ず画像で保存し、ファイル名か台帳に日付を入れておきます。サジェストは変動するため、「いつ、どのエンジンで、何が出ていたか」の記録がないと後から何も証明できません。削除を申し立てる場合も、業者や弁護士に相談する場合も、この記録が出発点になります。
気になる候補が出ていたら、まず確認すること
その候補をクリックした先に、何があるか
候補そのものより、その候補で検索した結果に何が出るかのほうが重要です。実体のある書き込みや記事がヒットするのか、それとも何も出てこないのか。前者なら書き込み側への対応も検討が必要になり、後者なら検索行動だけが先行している状態と考えられます。
社内に心当たりがないか
退職者の増加、クレーム対応のこじれ、SNSでの言及など、思い当たる出来事がないかを確認します。原因が社内にある場合、検索候補だけを何とかしても同じことが繰り返されます。
緊急度を見きわめる
明らかに事実と異なる内容で、営業や採用に実害が出ている場合は、専門家への相談を早めに検討したほうがよい局面です。一方、一時的な話題によるもので実害が確認できないなら、まずは記録を取りながら推移を見るという判断もあります。慌てて動くより、状況を正しく把握するほうが先です。
サジェストは変わる。だから「定点観測」が要る
サジェストは固定された表示ではなく、検索のされ方に応じて入れ替わり続けます。今日きれいでも、来月には変わっているかもしれません。逆に、気になる候補が自然に消えることもあります。
手動での確認が続かない理由
前述の手順は難しくありませんが、毎週これを3エンジン分、複数のキーワードで繰り返して記録に残すとなると、現実的には続きません。担当者が変わればまず途切れます。そして、変化に気づくのが遅れるという最初の問題に戻ってしまいます。
仕組みにしてしまうという選択
この「毎日決まったキーワードを、決まったエンジンで確認して記録する」という作業は、性質上そのまま自動化できます。私たちが提供しているAccessSuggestは、登録した社名やブランド名について、Google・Bing・Yahoo!のサジェストを毎日自動で取得し、新しい候補が出たりネガティブな語が混ざったときにメールで知らせるツールです。無料プランがありますので、まずは自社名を1つ登録して、どんな候補が出ているか確かめるところから始めてみてください。
よくある質問
サジェストに出る言葉は、誰かが操作しているのですか?
基本的には、実際の検索行動をもとにアルゴリズムが自動で決めています。ただし、意図的に特定の組み合わせを大量に検索して候補を作り出そうとする行為が存在するのも事実です。検索エンジン側もそうした不自然な動きへの対策を進めており、いずれにせよ企業側が同じ手法で対抗すべきものではありません。
気になる候補は、放っておけば消えますか?
その言葉が検索されなくなれば、時間の経過とともに候補から外れていくことはあります。一方で、話題が繰り返し再燃すれば残り続けます。どちらになるかは事前には分からないため、放置と対応のどちらを選ぶにせよ、記録を取りながら経過を見ることが前提になります。
パソコンとスマホで候補が違うのですが
端末や検索アプリによって候補が異なることは通常起こります。ログイン状態や位置情報でも変わります。確認するときは、シークレットモードのパソコンと、スマートフォンの両方で見ておくと実態に近くなります。
まとめ
- サジェストとは、検索窓に入力中に表示される「検索候補」で、実際の検索行動をもとに自動生成されている
- 検索回数とその伸び方、地域や言語、時期、検索エンジンのポリシーによって表示は変わる
- 企業にとって重要なのは、検索結果を見る前の段階で、これから関わる相手の目に入ってしまう点
- シークレットウィンドウで3エンジンを確認し、日付つきのスクリーンショットを残すのが第一歩
- サジェストは変動するため、単発の確認ではなく定点観測できる形にしておくとよい
まずは今日、自社名をシークレットウィンドウで検索してみてください。何も出てこなければそれが正常な状態であり、その状態を記録しておくこと自体が、後から見たときの比較材料になります。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
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