中小企業のネット風評被害対策は、「業者に依頼する」より先にやるべきことがあります。まずは自社が今どう見えているかを確かめ、監視するキーワードを決め、社内の対応ルールを作る。この3つは費用をかけずに今日から始められます。
この記事では、社員数十名規模の会社や個人店でも実行できる「最初にやる5つのこと」を、手順の形で整理します。専門用語は都度説明しますので、ITに詳しくない方でもそのまま進められます。
中小企業のネット風評被害は、どこに効いてくるのか
ネット風評被害とは、インターネット上の書き込みや検索結果によって、会社や店舗の評判が実態より悪く受け取られてしまう状態のことです。中小企業の場合、大企業と違って「社名を検索したときに出てくる情報の総量」が少ないため、ネガティブな情報が1つあるだけで全体の印象を左右してしまいます。
採用の応募数に静かに効く
求人を見た人の多くは、応募前に社名を検索します。このとき検索候補(サジェスト)に「〇〇工業 ブラック」のような言葉が並んでいると、応募をためらう理由になります。サジェストとは、検索窓に文字を入れた瞬間に下へ出てくる予測候補のことです。応募者から「候補にこう出ていたので不安でした」とわざわざ言われることはまずないため、影響が見えにくいのが厄介な点です。
取引前の「下調べ」で読まれている
新規の取引先や、見積もりを比較している最中の相手も、ほぼ確実に社名で検索しています。相見積もりで金額に大きな差がないとき、最後の判断材料が「検索したときの印象」になることは珍しくありません。BtoBだから口コミは関係ない、とは言い切れないのが現状です。
気づいたときには時間が経っている
風評の問題は、誰かが教えてくれるまで気づけません。だからこそ、対策の1本目は「削除」ではなく「把握」から始めるのが合理的です。
対策1|自社が今どう見えているかを、自分の目で確かめる
最初にやるのは調査です。費用はかかりません。所要時間は30分ほどで、確認するのは次の3か所です。
3つの検索エンジンで検索候補を見る
Google・Yahoo!・Bingの3つで、社名や店舗名を入力してみてください。ポイントは、必ずシークレットモード(閲覧履歴を残さない表示モード。ChromeならCtrl+Shift+N、Edgeも同じ操作)で行うことです。普段使っているブラウザだと自分の検索履歴が候補に混ざり、他人から見える姿とずれてしまいます。
社名だけでなく、「社名+スペース」で1文字ずつ、あ・か・さ・た・な…と入れていくと出てくる候補が変わります。「社名 評判」「社名 求人」「社名 やばい」など、応募者や取引先が実際に打ちそうな組み合わせも試してください。詳しい手順はサジェストの調べ方|自社名の検索候補を自分で調べる3エンジン手順で解説しています。
検索結果の1〜2ページ目を目視する
社名で検索して、上位20件に何が並んでいるかを確認します。自社サイト、求人サイト、企業データベース、口コミサイト、掲示板の順で、どこまでが自社のコントロール下にある情報かを見ておきましょう。自社の情報が3件しかなく、残りが第三者のページばかりであれば、それ自体がリスクです。
地図とSNSの口コミも合わせて見る
店舗や来客のある事業なら、Googleマップの口コミは検索結果と同じくらい読まれます。X(旧Twitter)で社名を検索し、直近1年分に何が投稿されているかも確認しておくと、火種の有無がわかります。
対策2|監視するキーワードを決めて、定点観測にする
1回調べて終わりでは意味がありません。検索候補も口コミも、時間とともに入れ替わるからです。次にやるのは「何を、どのくらいの頻度で見るか」を決めることです。
登録するキーワードは3種類に分ける
監視対象は、次の3種類を用意すると漏れが減ります。
- 社名そのもの:正式名称、株式会社を省いた通称、ひらがな・カタカナ・アルファベット表記のゆれ
- サービス名・店舗名:屋号が複数あるならすべて。支店名も含める
- 代表者名・主要人物名:同姓同名が多い名前でなければ登録しておく
表記ゆれを軽視しないでください。「〇〇建設」と「〇〇けんせつ」では出てくる候補がまったく違うことがあります。
頻度は週1回から。手作業なら記録を残す
まずは週1回、決まった曜日にチェックする形で十分です。重要なのは、見た結果をスプレッドシートに日付つきで残しておくこと。記録があると「いつから出始めたか」が言えるようになり、後々の判断材料になります。手動・スプレッドシート・ツールそれぞれの進め方はサジェストの監視方法|手動・スプレッドシート・ツールの3通りを比較にまとめています。
続かないなら自動化を検討する
手動チェックの最大の弱点は、担当者が忙しくなると止まることです。3エンジン×キーワード数だけシークレットモードで検索する作業は、キーワードが10個を超えたあたりから現実的でなくなります。毎日の確認と変化の通知を自動で回したい場合は、AccessSuggestのような監視ツールを使うと、増えた候補・消えた候補が自動で記録されます。無料プランから試せるので、まずは自社名1件を登録して様子を見るところからで十分です。
対策3|社内の対応ルールを、何も起きていないうちに決める
風評の問題で失敗が起きるのは、たいてい「発見した直後の数時間」です。慌てた現場が個別に反応してしまい、話が大きくなる。これを防ぐには、平時にルールを決めておくしかありません。
決めておく項目は4つだけ
A4半分に次の4項目を書いて共有しておけば、初動は大きく変わります。
- 誰に報告するか:発見者は必ず特定の1人(例:総務部長)に連絡する
- 何を保存するか:URL・日時・スクリーンショットを撮ってから相談する
- 誰が判断するか:反応するかどうかを決める権限者を明記する
- 誰が外部と話すか:問い合わせ窓口を一本化し、他の社員は答えない
スクリーンショットは、後から削除依頼や相談をする際に必ず求められる資料です。「消えるかもしれないから急いで保存する」と覚えておいてください。
やってはいけない初動
次の3つは、状況を悪化させやすい対応です。
- 感情的な反論を公開の場で書く:やり取り自体が新たな話題になり、拡散のきっかけになります
- 社員に一斉に「良い口コミを書いて」と依頼する:不自然な投稿は見抜かれ、口コミサイトの規約違反にもなり得ます
- 何もせず記録も残さない:対応しない判断は妥当なこともありますが、記録がないと再発時に打つ手が減ります
「反論しない」も立派な選択肢
閲覧数の少ない書き込みにわざわざ反応すると、かえって注目を集めることがあります。放置と反論のどちらを選ぶかは、その投稿がどれだけ読まれているか、内容が事実と異なるか、実害が出ているかで判断します。判断に迷ったら、まず記録を残して様子を見る、で構いません。
対策4|自社発信を増やして、検索結果を自分の情報で埋める
ネガティブな情報を消すより、良い情報を増やすほうが、中小企業にとっては現実的で費用対効果も高い対策です。検索結果に自社が管理するページが多く並ぶほど、第三者の情報が占める割合は相対的に下がります。
会社概要・運営者情報を先に整える
所在地、代表者名、設立年、電話番号、事業内容、許認可番号。これらが自社サイトに明記されているかを確認してください。不足していると、検索した人は他のサイトで情報を探すことになり、その先に何が書かれていても止められません。「調べる必要をなくす」のが最も安上がりな防衛策です。
社員・現場が見えるページを作る
採用面での不安を打ち消すのに効くのは、待遇の説明よりも「働いている人の顔が見える情報」です。スタッフ紹介、1日の流れ、施工事例や制作実績など、実在感のあるページを数本用意しておくと、検索結果の見え方が変わります。
更新は月1本でも意味がある
毎日更新する必要はありません。月1本でも、1年で12ページ増えます。プレスリリースやSNS公式アカウントも、社名で検索したときに上位に出やすい情報源です。
対策5|削除や法的対応が必要になるラインを知っておく
ここまでの4つで多くのケースは足ります。それでも対応が必要になる場面があるので、境界線だけ押さえておきましょう。
検索エンジンへの申し立てでできること
Google・Bing・Yahoo!には、検索候補について報告や削除を申し立てる窓口があります。ただし、申し立てれば必ず対応されるわけではなく、各社の基準に沿って個別に判断されます。判断は事案ごとに異なるため、結果を約束できるものではないと理解しておいてください。窓口と手順はサジェストの削除方法4つ|自分でできる対処と業者に頼む前の確認点で整理しています。
サイト運営者への削除依頼
書き込みそのものが問題であれば、掲載しているサイトの運営者に削除を依頼する方法があります。多くの口コミサイトや掲示板には問い合わせフォームがあり、事実と異なる点を具体的に指摘して依頼します。感情的な文面ではなく、「どの記述が」「どのように事実と異なるか」を淡々と書くのが基本です。
専門家に相談する目安
事実無根の内容で実害(取引の中止、内定辞退など)が出ている、投稿が継続的で執拗である、個人情報が晒されている。こうした場合は、自社だけで抱えず弁護士への相談を検討してください。名誉毀損や発信者情報開示といった法的手続きが関わる領域です。
費用と手間を比較して外部に任せたい場合、当社が運営するサジェスト汚染対策サービスのような相談先もあります。成果報酬型を採用しているところもあるため、複数の窓口を比べたうえで判断するとよいでしょう。
5つの対策を、どの順番でどれだけの手間でやるか
いっぺんに全部やろうとすると止まります。優先順と目安の工数は次のとおりです。
| 順番 | やること | 目安の手間 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 1 | 今どう見えているかを確認 | 初回30分 | 0円 |
| 2 | 監視キーワードを決めて定点観測 | 週15分 | 0円〜 |
| 3 | 社内の対応ルールを1枚にまとめる | 1時間 | 0円 |
| 4 | 会社概要の整備と自社発信 | 月1〜2時間 | 0円〜 |
| 5 | 削除申請・専門家相談の判断 | 必要時のみ | 案件による |
1と3は今週中に終わります。まずここまでやれば、「何が起きているかわからない」「起きたときに誰が動くかわからない」という2つの不安は解消できます。
よくある質問
今は何も出ていません。それでも対策は必要ですか?
必要です。問題が出てから始めると、記録がないところから状況把握を始めることになります。何も出ていない今のうちに「平常時の状態」を記録しておくと、変化が起きたときにすぐ気づけますし、いつから変わったのかも説明できます。手間は週15分程度です。
対策業者に依頼したほうが早いのでは?
状況によります。ただし、依頼する場合でも「今どう見えているか」を自社で把握していないと、提案内容が妥当か判断できず、費用の比較もできません。自社での確認は、業者を検討する前提として先にやっておくべき作業です。契約形態や確認すべき項目については、費用相場を扱った記事も参考にしてください。
社員数10名以下でも、そこまでやる意味はありますか?
むしろ小さい会社ほど影響は大きくなります。掲載されている情報の総量が少ないため、ネガティブな情報1件が検索結果に占める比重が高くなるからです。一方で、必要な作業量も小さくて済みます。監視するキーワードが数個で足りるなら、対策1〜3は1日で形になります。
まとめ
中小企業のネット風評被害対策は、次の5つを順番に進めるのが現実的です。
- 3つの検索エンジンで、自社が今どう見えているかを確認する
- 監視するキーワードを決めて、週1回の定点観測にする
- 報告先・保存する資料・判断者・窓口の4項目を先に決めておく
- 会社概要を整え、自社発信で検索結果を自分の情報で埋める
- 削除申請や専門家相談が必要になるラインを知っておく
1〜3は費用をかけずに今週中に始められます。逆に、この土台がないまま外部に依頼しても、提案の良し悪しを判断できません。まずは自社名を検索するところから始めてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
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