「Xで自社が名指しで悪く書かれている。削除してもらえないか」——結論から言うと、Xへの削除依頼は「その投稿がXのルールに違反しているかどうか」の一点で判断されます。企業への批判や低い評価そのものは違反にあたらないことが多く、通報する前に「どの投稿が、どのルールに触れているか」を切り分ける作業が必要です。
この記事では、企業の担当者が自分でできるXの誹謗中傷の削除依頼の手順を、画面の操作レベルまで具体的に整理します。あわせて、通報だけでは動かせない範囲と、そこから先を専門家に渡す線引きも示します。
まず知っておきたい|Xの削除依頼で動かせる範囲

手順に入る前に、期待値をそろえておきます。ここを誤解したまま通報すると、「出したのに何も起きなかった」という結果だけが残ります。
企業が出せるのは「ルール違反の通報」であって「削除命令」ではない
Xに対して企業ができるのは、対象の投稿がXのルール(利用規約・各種ポリシー)に違反していると報告することです。報告を受けたX側が自社の基準で審査し、違反と判断すれば投稿の削除やアカウントへの措置がとられます。つまり判断するのはあくまでプラットフォーム側で、依頼した側が結果を決められるわけではありません。
また、審査に何日かかるか、どういう理由で判断されたかは、依頼した側からは見えません。「出したら数日で必ず消える」という前提でスケジュールを組まないほうが安全です。
「批判」と「ルール違反」は別物
たとえば架空の〇〇工業株式会社について、「対応が遅くて残念だった」という投稿は、事実に基づく感想であれば批判であって違反ではありません。一方、社員の氏名と自宅住所を晒す、実在しない不祥事を事実のように書く、繰り返し攻撃的な投稿を送りつける——といったものは、それぞれ別のポリシー違反として報告できます。
この線引きは、口コミサイトに悪い書き込みがあったときの考え方と共通します。まず「反応すべき対象か」を決めてから動く点については、口コミサイトの悪い書き込みへの対応|放置と反論、どちらが正解かで整理しているので、通報の前に一度目を通しておくと判断が早くなります。
通報の前にやる3つの記録
通報すると、対象の投稿がその場で見えなくなったり、相手がアカウントを削除したりして、証拠ごと消えることがあります。順番としては記録が先、通報が後です。
1. スクリーンショットは「URLが写る形」で残す
スマートフォンアプリの画面だけを撮ると、後から「どの投稿か」を特定できません。パソコンのブラウザで対象の投稿を開き、アドレスバーのURLと投稿本文・投稿日時・アカウント名が1枚に収まる形で撮影します。返信がぶら下がっている場合は、その返信も別途撮っておきます。
2. 投稿のURLを一覧にする
Xの各投稿には固有のURLがあります。投稿右上のメニューから「リンクをコピー」を選ぶと取得できます。日時・アカウント名・URL・内容の要約を1行ずつ表計算ソフトに残しておくと、通報フォームへの入力も、後で弁護士に相談する場合の説明も一気に楽になります。
3. 社内の誰が対応するかを先に決める
現場の担当者が独断で相手に返信してしまい、そのやり取りごと拡散する——というのが企業側で起きがちな二次被害です。誰が発見し、誰が判断し、誰が窓口になるかを事前に決めておくべき理由と決め方は、会社への誹謗中傷の対応|社内でまず決めておくべき5つのルールにまとめてあります。まだ決まっていないなら、通報作業と並行して整えてください。
Xの誹謗中傷を削除依頼する手順

記録がそろったら、実際の通報に進みます。Xの通報はおおむね次の3ルートがあり、内容によって使い分けます。
手順1:対象の投稿から通報する(基本ルート)
- 対象の投稿の右上にある「…」(その他)をタップまたはクリックする
- メニューから「投稿を報告する」を選ぶ
- 「どのような問題がありますか?」の選択肢から、当てはまるものを選ぶ
- 案内に沿って、対象が誰か(自分/自分の会社/第三者)を選ぶ
- 補足の説明欄があれば、いつ・どこで・何が事実と違うのかを短く書く
- 送信し、表示される受付番号や確認メールを控える
アプリでもブラウザでも操作の流れは同じです。返信の中に問題の書き込みがある場合は、元の投稿ではなくその返信そのものを開いて通報します。ここを間違えると、審査の対象がずれます。
手順2:違反カテゴリの選び方
通報が形だけで終わる最大の原因が、カテゴリ選択のミスマッチです。「気に入らないから」ではなく、どの行為がどのルールに触れるかで選びます。目安は次のとおりです。
- 社員や代表者の氏名・住所・電話番号・顔写真などが晒されている → 個人情報の掲載(プライバシー侵害)
- 特定の個人に向けて執拗に攻撃的な投稿が続いている → 嫌がらせ・攻撃的な行為
- 公式アカウントを装った偽アカウントから発信されている → なりすまし
- ロゴや商品画像を無断で使っている → 知的財産・商標に関する報告(専用フォームが別にあります)
- 事実と異なる内容が事実として書かれている → 該当カテゴリがない場合が多く、ヘルプセンターの専用フォームへ
最後の「事実と違う」だけは注意が必要です。投稿画面からの通報メニューには、企業に関する事実誤認をそのまま扱う選択肢が用意されていないことが多く、この場合は次の手順3のルートを使います。
手順3:ヘルプセンターの専用フォームから出す
プライバシー侵害、なりすまし、商標・著作権の侵害などは、投稿画面からの通報とは別に、ヘルプセンター側に専用の申告フォームが用意されています。企業として正式に出す場合はこちらのほうが情報を書き込める量が多く、担当者名・会社名・権利者との関係・対象URLの一覧をまとめて提出できます。
提出時のコツは、感情的な説明を削り、「対象URL/どのルールのどの項目に該当するか/その根拠」の3点だけを淡々と並べることです。長い経緯説明は審査の助けになりません。
通報が通らなかったときの動き方
「違反は確認されませんでした」という通知が返ってくることは珍しくありません。そこで止まらずに、次の3つを順に検討します。
1. 角度を変えて出し直す
1つの投稿が複数のルールに触れている場合、選んだカテゴリが変われば結論も変わることがあります。たとえば「事実と違う」で通らなかった投稿が、社員の実名が入っている点を根拠にプライバシーの観点で出し直すと扱いが変わる、というケースです。同じカテゴリで何度も再送するのは逆効果なので、根拠を変えられるかどうかで判断します。
2. 削除ではなく「広がりを止める」操作に切り替える
相手アカウントのミュートやブロック、自社アカウントへの返信制限の設定など、投稿そのものは消せなくても露出を抑える手段があります。特に自社の公式アカウントの投稿に攻撃的な返信が集まっている場合は、返信できる相手を制限する設定が有効です。
3. 弁護士に渡す線引きを判断する
自力での通報で動かせるのはここまでです。投稿者を特定したい、法的な削除請求に進みたい、という段階になると、企業の担当者ができる作業ではなくなります。どういう状態になったら専門家に上げるべきかの判断軸は、サジェストの削除は弁護士に相談すべき?依頼を検討する4つのケースと相談前の準備で整理しています。判断の基準はサジェストでもSNS投稿でも共通なので、そのまま使えます。
投稿が消えても終わりではない|検索への波及を確認する

Xの投稿は削除されても、その話題がSNSの外に出ていることがあります。削除依頼と並行して、次の2か所を必ず見てください。
X内の検索候補に残っていないか
投稿が消えても、X内の検索窓に社名を入れたときに出る候補(サジェスト)には、しばらく言葉が残ることがあります。X内の検索候補がどう決まり、どこまで確認できるかはX(旧Twitter)の検索候補に社名が出る仕組み|確認と対処の手順にまとめています。投稿本体の通報とは扱いが別なので、切り分けて確認してください。
Google側の検索候補・検索結果に飛び火していないか
SNSで一定量の話題になると、同じ言葉がウェブ検索の候補として出てくることがあります。この場合はXへの通報ではなく検索エンジン側への対応になり、手段も窓口も変わります。サジェストの削除方法4つ|自分でできる対処と業者に頼む前の確認点で全体像を確認したうえで、必要なら該当する窓口へ進んでください。
そもそも自社が今どう見えているかを定点で見る習慣がないと、この波及に気づくのが遅れます。確認手順を仕組みにする方法は会社のエゴサーチのやり方|自社の評判チェックを仕組み化する7ステップにまとめています。
なお、検索候補側の対応まで自社で抱えきれない場合の相談先として、成果報酬型のプランを設けているサジェスト汚染対策サービス(サジェスト対策サービス)のような選択肢もあります。費用の考え方だけでも聞いておくと、社内で予算を検討するときの目安になります。
企業アカウントで通報するときにやってはいけない4つのこと

通報そのものより、通報の周辺でやってしまう行動のほうがダメージになることがあります。
- 公式アカウントから反論を投稿する:やり取りが引用されて拡散の燃料になります。反応するかどうかの判断軸は前掲の口コミ対応の記事を参照してください。
- 関係者に一斉通報を呼びかける:組織的な通報行為とみなされ、自社側が不利になるおそれがあります。
- 相手のアカウントを詮索して晒す:自社が加害側になり、立場が逆転します。
- スクリーンショットを撮らずに通報する:投稿が消えたあと、事実関係を説明する材料が何も残りません。
他社の口コミプラットフォームでも通報の作法はよく似ています。Googleマップ側で同じ状況が起きている場合は、Googleマップの口コミを削除依頼する手順|低評価が消えないときの動き方に窓口と操作をまとめてあります。
よくある質問
Q. 削除依頼を出すと、相手に自社が通報したことは伝わりますか?
通報者が誰かは相手に通知されない運用が基本です。ただし、対象の投稿が自社について書かれたものである以上、削除された時点で相手が推測することはあり得ます。通報と同時に公式アカウントで言及すると、そこから特定されるので避けてください。
Q. 何日くらいで結果が出ますか?
内容や時期によって幅があり、一律の目安はありません。数日で通知が来ることもあれば、しばらく音沙汰がないこともあります。「いつまでに消える」という前提で社内や取引先に説明しないほうが安全です。
Q. 従業員個人が書かれている場合、会社が代理で通報できますか?
プライバシー侵害の申告など、本人以外からの申告を受け付けている類型もありますが、本人からの申告を求められる場面もあります。まずは本人の意向を確認し、本人が出す場合は会社が手順とスクリーンショットの準備を手伝う形が現実的です。人事や法務を含めて対応窓口を一本化しておくと動きやすくなります。
まとめ
Xの誹謗中傷の削除依頼は、「消してもらう交渉」ではなく「ルール違反を根拠づけて報告する作業」です。やることを整理すると次のとおりです。
- URLが写る形でスクリーンショットを撮り、投稿URLを一覧化する
- 社内の判断者と窓口を決めてから動く
- 投稿画面からの通報と、ヘルプセンターの専用フォームを内容で使い分ける
- 通らなかったら、根拠を変えて出し直す/拡散を止める設定に切り替える
- 投稿者の特定や法的請求が必要な段階になったら弁護士に渡す
- 投稿が消えても、X内の検索候補とウェブ検索側への波及を確認する
SNS上の1件の投稿は、放っておくと検索候補という「消えにくい形」に変わることがあります。投稿への対応と並行して、社名の検索候補に変化がないかを定点で見ておくことが、結果的にいちばん手間の少ない守り方になります。
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本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
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