YouTubeの検索窓に自社名を入れたら、会社名のうしろに「ひどい」「やばい」といった言葉が並んでいた——という相談は少なくありません。結論から言うと、これはウェブ検索のサジェストとは仕組みも窓口も別物で、「YouTube内で実際にその語が検索されているか」と「その語に応える動画があるか」の2つがほぼすべてです。まず動画を特定し、そのうえでYouTubeの窓口と自社チャンネルの両面から動かすのが現実的な進め方になります。
YouTubeのサジェストに会社名が出るのは、動画とその見られ方が原因
サジェストとは、検索窓に文字を入れたときに下に出てくる検索候補のことです。YouTubeにもこのサジェストがあり、ウェブ検索と同じように会社名や店名を打った瞬間に候補が並びます。
候補は「YouTube内で打たれた語」からできている
YouTubeの検索候補は、YouTubeというサービスの中で実際に入力された検索語をもとに組み立てられています。つまり、SNSでの話題やニュース記事がそのまま反映されるわけではなく、「その話題を知った人が、動画を探しにYouTubeへ来た」という行動があってはじめて候補が育ちます。逆に言えば、候補が出ているということは、動画を探しに来た人が一定数いるということです。
動画がセットで存在していることが多い
ウェブ検索のサジェストは、記事が1本もなくても検索行動だけで候補が立つことがあります。一方YouTubeの場合は、その語で検索した人が実際に何かを見て、視聴時間が積み上がることで候補が定着していきます。候補の裏側には、たいてい具体的な動画が1本か2本あると考えて動いたほうが早いのはこのためです。ウェブ検索側の候補がどう決まるかはサジェストの決まり方と仕組み|Googleの検索候補が表示される4つの要因で整理していますので、比較しながら読むと違いがつかめます。
YouTubeのサジェストがウェブ検索と決定的に違う3つの点
ここを取り違えると、正しい窓口にたどり着けないまま時間だけが過ぎます。
1. 削除の窓口が別で、判断基準も別
ウェブ検索の検索候補については、Googleに対して所定のフォームから申し立てる道があります(手順はGoogleサジェストの削除申請の手順|申し立てが通る条件と通らないときの次の一手にまとめています)。Yahoo!やBingも、それぞれ別の窓口を持っています(Yahoo!サジェストの削除依頼はどこに出す?Bingの窓口と依頼文の書き方)。ところがYouTubeの検索候補には、これらに相当する「候補そのものを消してほしい」と申し立てる専用フォームが用意されていません。ここが実務上いちばん大きな違いです。
2. ログイン状態で見え方が大きく変わる
YouTubeは視聴履歴と結びついたサービスなので、自分のアカウントでログインしたまま確認すると、過去に自社の動画を何度も見た履歴が候補に影響します。「自分には出るのに社員には出ない」「昨日は出たのに今日は出ない」という食い違いはここから生まれます。この現象の一般的な説明はサジェストの見え方が人によって違う理由|同じ検索なのに候補が変わる仕組みを参照してください。
3. 動画本体への対応とは切り分けて考える
「検索候補に出ること」と「その動画の内容そのもの」は別の問題です。動画に事実と異なる内容が含まれている場合の対応は、また別の手順になります。この記事では検索候補への対処に絞って扱います。
まず自分で確認する4つのステップ
業者や専門家に相談する前に、ここまでは自社で確認できます。所要時間は20〜30分程度です。
ステップ1:ログアウト状態で確認する
ブラウザのシークレットウィンドウ(プライベートウィンドウ)を開き、ログインしない状態でYouTubeにアクセスします。検索窓に会社名を1文字ずつ入力し、候補がどう変化するかを見ます。会社名だけでなく、「会社名+スペース」まで入れた状態も必ず確認してください。スペースを入れた瞬間に候補が変わることがあります。
ステップ2:パソコンとスマホアプリの両方で見る
YouTubeはスマートフォンのアプリからの利用が多く、アプリとブラウザで候補が一致しないことがあります。取引先や求職者の多くはスマホで見ているので、アプリ側の確認を省かないでください。アプリはログイン状態を切りにくいので、可能なら未ログインの端末で見るか、シークレットモードのブラウザ版で代用します。
ステップ3:その候補で実際に検索し、動画を特定する
ここが最も重要な工程です。気になる候補をそのまま検索し、上位に並ぶ動画のURL・チャンネル名・投稿日・再生数を控えます。候補を押し上げているのが1本の動画なのか、複数の動画なのか、あるいは自社とは無関係な同名の別会社の話なのかで、その後の打ち手がまったく変わります。同名企業との混同は珍しくないので、動画の中身まで確認してください。
ステップ4:日付入りで記録を残す
確認日時・確認した端末・ログイン状態・出ていた候補・特定した動画URLを、1枚のシートにまとめておきます。あとで窓口に相談する場合も、社内で経過を共有する場合も、この記録が土台になります。ウェブ検索側の記録の取り方はサジェストの調べ方|自社名の検索候補を自分で調べる3エンジン手順と同じ考え方で揃えると管理が楽です。
特定した動画を、どう見分けるか
動画が見つかったら、次は中身の性質を仕分けます。ここを飛ばして「とにかく消したい」と動くと、通らない依頼を繰り返すことになります。
事実と異なることが述べられている場合
たとえば架空の「〇〇工業株式会社」について、実際には行われていない行政処分を受けたと断定している、退職していない人物が在籍しているかのように語られている、といったケースです。「どの部分が、どの事実と、どう違うのか」を1行ずつ書き出せる状態にしておくと、以降のどの窓口でも話が早くなります。
感想や評価にとどまる場合
「対応が遅かった」「価格が高いと感じた」といった体験の語りは、事実の誤りとは別の話です。この種の内容は削除の対象になりにくく、打ち手は「消す」ではなく「他の情報を増やす」側に寄ります。
YouTubeでできる対処と、できないこと
検索候補を直接消す申請はできない
先に触れたとおり、YouTubeには検索候補そのものを対象にした申し立て窓口がありません。動くべきなのは「候補を支えている動画」と「その語で検索した人が何を見るか」の2つです。ウェブ検索側で使える手段の全体像はサジェストの削除方法4つ|自分でできる対処と業者に頼む前の確認点にまとめてありますが、YouTubeではそのうち「申請」の選択肢が使えない、と理解しておくと混乱しません。
動画への報告は、動画ページから行う
明らかにガイドラインに反する内容であれば、動画ページの「…」メニューから報告できます。報告時は、どのガイドラインのどの項目に当たると考えるかを具体的に書きます。ただし報告した内容がどう扱われるかはプラットフォーム側の判断であり、結果を約束できるものではありません。報告の記録(日時・報告理由)は必ず控えておいてください。
自社チャンネルで「検索の受け皿」をつくる
YouTubeの候補が育つ条件は「その語で検索した人が動画を見ること」でした。ならば、その検索に自社の動画が応えられる状態をつくるのが正攻法になります。社名で検索した人が最初に見る場所に、会社の実際の様子・サービスの説明・スタッフの紹介といった動画を置いておく。凝った編集は不要で、数分の説明動画でも十分に受け皿になります。
外部に相談する場合の線引き
事実無根の内容が広く再生されている、営業や採用に実害が出ている、といった段階では、法的な手続きの検討が必要になります。どこからが弁護士の領域かはサジェストの削除は弁護士に相談すべき?依頼を検討する4つのケースと相談前の準備で整理しています。ウェブ検索側のサジェストもあわせて相談したい場合、成果報酬型を用意しているサジェスト汚染対策サービスのような選択肢もあります。いずれにせよ、先ほどの記録が揃っているほど相談はスムーズです。
YouTubeの候補は、ほかの検索面にも波及する
YouTubeで話題になった語は、その動画を見た人がウェブ検索でも同じ語を打つことで、時間差でウェブ検索のサジェストに現れることがあります。逆の流れも起こります。だからYouTube側だけを見て安心せず、ウェブ検索と地図検索も同時に見ておく必要があります。店舗業であれば地図検索の候補も無視できません(Googleマップのサジェストに店名と変な言葉が並ぶ|地図検索の候補の仕組みと対処)。面ごとに窓口も仕組みも違うので、まとめて1つの対策で片づけようとしないことが大切です。
一度確認して終わりにせず、見張り続ける
YouTubeの候補は、動画の再生が伸びた時期に急に立ち上がり、落ち着けば静かになります。問題は、立ち上がった瞬間に社内の誰も気づかないことです。求職者や取引先のほうが先に見つけている、という順番になりがちです。
月に1度でも決まった日に確認する運用があれば、気づきの遅れはかなり減ります。担当者を1人決め、確認する語と面(YouTube・ウェブ検索・地図検索)をリスト化しておく。手動・スプレッドシート・ツールのどれで回すかの比較はサジェストの監視方法|手動・スプレッドシート・ツールの3通りを比較にまとめています。件数が増えて手作業が続かなくなった段階で、自動チェックに切り替えるのが現実的です。
よくある質問
動画が削除されれば、検索候補もすぐ消えますか?
同時ではありません。候補は検索行動の蓄積からできているため、動画がなくなっても、その語で検索する人がしばらく残ります。候補が薄れるまでには時間差があると考えてください。逆に、動画が残っていても検索されなくなれば候補は目立たなくなります。
自社で何度も検索すれば、候補を上書きできますか?
社内の数人が繰り返し検索しても、意図した効果は期待できません。不自然な操作は検出の対象になり得ますし、自分たちの履歴が汚れて正しい確認ができなくなるという実害のほうが大きいです。確認は必ずログアウト状態で行い、検索回数を稼ごうとしないでください。
まだ動画が投稿されていない段階でも、候補は出ますか?
出ることはありますが、定着しにくい傾向があります。他のSNSやニュースで話題になり、その動画を探しに来た人が検索した結果として一時的に候補が現れ、動画が見つからないまま検索が止めば薄れていく、という動き方をします。
まとめ
YouTubeの検索候補に会社名とネガティブな言葉が並んだときは、次の順で動きます。ログアウト状態でパソコンとスマホの両方から候補を確認し、その語で検索して元になっている動画を特定する。動画の中身が事実の誤りなのか感想なのかを仕分ける。候補そのものを消す申請窓口はないため、動画への報告と、自社チャンネルでの受け皿づくりの両輪で進める。そして、ウェブ検索や地図検索への波及も含めて見張り続ける——ここまでが一連の流れです。
大切なのは、慌てて「消す」ことだけに向かわず、まず何が起きているかを正確に把握することです。記録が揃っていれば、社内での判断も外部への相談も、格段に進めやすくなります。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
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