転職会議やOpenWorkなどの転職口コミサイトに悪い口コミが並んでいると分かったとき、企業側にできることは大きく4つです。①事実確認と社内共有、②規約違反に当たる場合の削除依頼、③自社からの情報発信、④書かれた原因そのものへの対処。この順番で動くのが基本です。
この記事は「悪い口コミがあると分かったあと、何をするか」に絞って書いています。そもそも応募が減った原因がネット上のどこにあるのかを切り分ける段階の方は、先に採用の応募が減った原因はネットにある?検索結果が応募数を左右する仕組みをお読みください。原因が転職口コミサイトだと分かった前提で、ここから先を進めます。
転職会議・OpenWorkの悪い口コミへの対応は、この順番で考える
転職口コミサイトとは、その会社で働いた経験のある人が、給与・残業・社風・退職理由などを投稿する求職者向けのサイトのことです。転職会議、OpenWork、ライトハウスなどが代表的で、社名で検索したときに自社サイトや求人ページと並んで上位に出てきます。
ここで一番やってはいけないのが、最初に削除依頼から入ることです。転職口コミサイトの投稿は「元従業員の体験談」という体裁を取っているため、内容が厳しくても規約違反とは判断されないケースが多く、削除だけを追いかけると時間と労力を消耗します。順番としては、事実確認 → 削除依頼の可否判断 → 自社発信 → 原因への対処、と進めるのが現実的です。
なお「反論すべきか、放置すべきか」という判断の軸そのものは、口コミ全般に共通する話なので口コミサイトの悪い書き込みへの対応|放置と反論、どちらが正解かにまとめています。この記事では判断のあとの実務に進みます。
転職口コミサイトは、他の口コミサイトと仕組みが違う
対応を考える前に、この媒体特有の仕組みを押さえておくと判断を誤りにくくなります。飲食店やクリニックの口コミサイトとは、投稿が集まる理由も、見え方も違います。
書いているのは、主に辞めた人
転職口コミサイトの投稿者は、退職者と転職活動中の在職者が中心です。つまり母集団がはじめから偏っています。満足して働き続けている社員は、わざわざ口コミを書きに行く動機がありません。星の平均が実態より低く出やすいのは、この構造によるところが大きいと考えられます。社内で共有するときは、この前提を先に伝えておくと、現場が必要以上に動揺せずに済みます。
「投稿すると他社の口コミが読める」という仕組み
多くの転職口コミサイトは、自分が勤務先の口コミを投稿すると、他社の口コミが閲覧できるようになる仕組みを採用しています。転職活動中の人が閲覧権のために書く、というケースが一定数あるということです。退職直後にまとめて投稿が増えるのは、この仕組みが影響していることがあります。
点数が「数値」で表示される
文章だけでなく、総合評価や項目別スコアが数字で出るのも特徴です。求職者は本文を読む前に数字で足切りをすることがあるため、1件の極端な低評価が、件数の少ない企業では平均値を大きく引き下げます。逆に言えば、投稿件数が増えていけば1件の影響は薄まります。これは後述の対応④につながる考え方です。
対応①:まず事実かどうかを確認し、社内で共有する

削除できるかどうかを判断するにも、社内を改善するにも、出発点は「書かれている内容が事実かどうか」の切り分けです。
確認する3点
- 事実そのものか、感想か:「残業代が出ない」は事実の主張、「雰囲気が合わなかった」は感想です。後者は削除の対象になりにくい一方、前者は制度の確認が必要です。
- いつの話か:数年前に退職した人の投稿が、今も同じ条件のように読まれていることがあります。制度を変えた時期を控えておきます。
- 個人が特定される表現があるか:役職名や部署名で特定の社員が分かる書き方は、削除依頼の材料になりうる部分です。
投稿者探しはしない
社内で話題になると、どうしても「誰が書いたのか」に関心が向きます。しかし投稿者の特定を社内で始めると、在職者が萎縮し、離職の理由がもう一つ増えるだけです。誰が対応の窓口になるのか、現場に問い合わせが来たら何と答えるのかを先に決めておくほうが効果があります。決め方は会社への誹謗中傷の対応|社内でまず決めておくべき5つのルールで整理しています。
対応②:削除依頼ができるのは、どんな書き込みか

転職口コミサイトにも、企業からの削除依頼を受け付ける窓口があります。ただし判断基準は各サイトのガイドラインであって、「内容が厳しい」「事実と違うと感じる」だけでは通りません。
ガイドライン違反に当たりやすい類型
- 特定の個人が識別できる記述(実名、それに準じる役職・部署の特定)
- 犯罪行為を断定する記述で、裏付けが示されていないもの
- 勤務した事実がないと考えられる投稿(同業他社との取り違え、明らかに存在しない制度への言及など)
- 同一内容の重複投稿、明らかな営業目的の書き込み
依頼の出し方
各サイトのフッターにある「お問い合わせ」「企業様へ」といったページから、企業担当者向けの窓口を探します。依頼時は、該当する口コミのURLと投稿日、どのガイドライン条項に該当するか、そう考える根拠をセットで書きます。感情的な抗議文ではなく、条項との照合を淡々と示した文面のほうが処理されやすくなります。同じ考え方で進める媒体別の実務は、Googleマップの口コミを削除依頼する手順|低評価が消えないときの動き方も参考になります。
通らなかったときの線引き
削除依頼が通らなかった場合、次に検討するのは法的手続きです。ただしこれは費用も時間もかかるため、すべての書き込みで進める話ではありません。具体的な虚偽の事実が書かれていて、それによる実害(内定辞退、取引への影響など)が説明できるような場合に、はじめて相談する価値が出てきます。相談すべきかどうかの見分け方はサジェストの削除は弁護士に相談すべき?依頼を検討する4つのケースと相談前の準備にまとめました。サジェストの記事ですが、判断の枠組みは口コミでも共通です。
対応③:自社から情報を出し、口コミ以外の判断材料を増やす
削除できる口コミは限られます。そこで実務上いちばん効くのが、求職者が口コミしか見られない状態を解消することです。判断材料が口コミだけなら、求職者は口コミを信じるしかありません。
求人票と実態のズレを消す
悪い口コミの中身をよく読むと、「聞いていた話と違った」という趣旨のものが少なくありません。これは求人票の書き方で減らせる部分です。みなし残業の有無と時間数、繁忙期の実態、休日の取得状況を具体的に書いておくと、入社後のギャップが減り、結果として将来の低評価が減ります。
自社サイト側を整える
採用ページに社員数の推移、平均勤続年数、一日の流れといった具体的な情報を置くと、口コミと突き合わせて読んでもらえるようになります。会社概要ページの整え方は会社概要・運営者情報の充実が信頼につながる理由|風評リスクを下げる書き方で扱っています。
外部媒体にも自社発信を置く
自社サイトだけだと、社名検索の結果に占める自社の面積は増えません。プレスリリースや採用関連の取材記事など、他ドメインに置かれる情報があると、検索結果の見え方が変わります。中小企業でも取れる手段はプレスリリースの効果は中小企業にもある?検索結果を自社発信で埋める方法にまとめています。
対応④:書かれた原因そのものに手を入れる

遠回りに見えますが、転職口コミサイトではこれが最も確実な対応です。理由は単純で、投稿は退職のたびに追加されるからです。原因が残っている限り、削除しても同じ内容の口コミがまた書かれます。
口コミを「無料の退職者アンケート」として読む
退職面談では本音が出にくいものですが、匿名の口コミには出ます。同じ指摘が3件以上重なっている項目があれば、そこは実際に課題がある可能性が高いと考えられます。給与テーブル、評価基準の開示、残業の把握方法など、手を入れられるところから着手します。
改善したら、改善した事実を出す
制度を変えたのに口コミが古いままだと、求職者には伝わりません。「◯年◯月に評価制度を改定しました」という事実を採用ページや求人票に明記しておけば、古い口コミを読んだ人が時系列で判断できるようになります。口コミそのものを消さなくても、読まれ方は変えられます。
口コミが検索結果・検索候補に波及していないか確認する

転職口コミサイトの評価が広く読まれると、検索する人が増え、その検索行動が検索エンジン側にも表れることがあります。口コミサイト内だけを見ていると、この波及に気づくのが遅れます。
確認する検索語
「社名」単体に加えて、「社名 評判」「社名 転職会議」「社名 求人」「社名 離職率」あたりをブラウザのシークレットウィンドウで検索し、1ページ目に何が並ぶかを見ます。検索結果と検索候補の両方を、定期的に見る形にしておくのが理想です。手順は会社のエゴサーチのやり方|自社の評判チェックを仕組み化する7ステップとサジェストの調べ方|自社名の検索候補を自分で調べる3エンジン手順にあります。
検索候補にまで出てしまったら
検索候補(サジェスト)に「社名 + ネガティブな言葉」が並ぶ状態になると、口コミサイトを見ていない人の目にも触れます。ここまで来ると口コミサイトへの対応だけでは追いつかないため、検索エンジン側への対応が別途必要になります。自社での対応が難しい場合は、成果報酬型の料金体系もあるサジェスト汚染対策サービスのような相談先を、選択肢のひとつとして検討してもよいでしょう。
よくある質問
悪い口コミに、企業として公式に反論を投稿してもいいですか
サイトによっては企業からのコメント機能がありますが、使う場合は個別の投稿への反論ではなく、制度についての事実を淡々と補足する形をおすすめします。投稿者と言い争っているように見えると、それ自体が新たな評価材料として読まれてしまいます。
良い口コミを社員に書いてもらうのは問題ありますか
会社が依頼して投稿させる行為は、多くのサイトで規約違反に当たります。発覚すると投稿がまとめて削除されたり、企業側の信用を損ねたりするおそれがあります。「口コミサイトというものがあると周知する」までにとどめ、内容や投稿の有無は本人に委ねるのが安全です。
対応にはどのくらい時間がかかりますか
削除依頼の回答までの期間はサイトによって異なり、数日で返るものもあれば、それ以上かかるものもあります。一方、自社発信と社内改善は効果が出るまでに数か月単位の時間がかかります。短期の対応と中長期の対応を分けて、並行で進めるのが現実的です。
まとめ
転職会議やOpenWorkの悪い口コミへの対応は、①事実確認と社内共有、②ガイドライン違反に当たる場合の削除依頼、③自社からの情報発信、④原因そのものへの対処、という4段構えで考えます。削除から入ると行き詰まりやすいこと、投稿者を社内で探さないこと、そして口コミが検索結果や検索候補にまで波及していないかを定期的に見ること。この3点を押さえておけば、採用への影響はかなり抑えられます。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
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